近くの公園に一本の「モチの木」があります、ちょうど四弁の小さな
花が咲き終わったころです。
子供の頃、この木をなんと呼んでいたかは覚えていませんが、この
木の皮を剥いで「トリモチ」をつくった事を覚えています。
「 当時の男の子は、ズボンのポケットに細いひもでグルグル巻きにし
た肥後の守を 持って いました。
その肥後の守で木の枝を切っては鳥を捕る罠を仕掛けたり、ゴム銃
を作ったり、竹を切っ て弓矢や笛、竹トンボ、凧とありとあらゆるものを
小刀一つで作ったものです。
モチの木の根本にひざまずいて両の手のひらに一杯、皮を剥いだら
水辺の平らな石の 上にその皮を置いて拳大の石で 叩いて潰します、
緑色の汁と青臭い匂いをそこいらじゅうに 飛ばしながら叩いていると
粘りが出てきて、丁度、ヨモギ団子のような感じになります
こ の粘る団子には、繊維カスが混じっていますので、水に浸けて延
ばすようにして、このカスを洗い流します。
繊維質の滓が取れた団子は 粘着力の強い緑色のガム状に仕上が
ります。
これを水を張った小瓶に落としたり、口の中にふくんだり、濡らした椿
の葉に挟んで持ち帰ります。
当時、薬屋でも水を張った壺の中に浮かせて売っていたように思い
ます。 子供でも買える値段でした。
トリモチと輪切りにしたみかんを持って、谷の奥まで行ってメジロを捕
る場所を選びます。
谷のあちこちで鳥達の鳴き交わす声が響きます。
お目当てのメジロのいる方向を決めて、輪切りにしたみかんを枝にさします。
メジロが、鳴き真似を聞いて、鳴き声のきこえる方へと、枝葉に隠れな
がら、渡ってくるコー スを読んで、そのコースに、一本のトリモチを貼っ
た枝を出して置きます。
私は、鳥が伝い降りてくるコースの反対側に、隠れて(別に姿を隠す必
要も無かったけどそ の時々に併せてメスやオスの鳴き真似をします。
後は、メジロがみかんを見つけて、トリモチの付いた枝に留まれば、
走って行って、枝からメジロを 注意深く外します。
|